食品工場の労災を防ぎながら生産性を高める安全対策の進め方

 

 

食品工場では、1件の労災が発生するとライン停止・応急対応・人員再配置などで生産性が大きく低下します。

 

本ページでは、労災を防ぎながら効率を高める具体的な安全対策を解説します。

 

国や行政が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)。

 

しかし、現場の整理・標準化ができていない状態でITを導入しても「ムダを自動化」するだけに終わります。

 

本質的な生産性向上に必要な「正しい順序」を解説します。

 

 

 

 

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ノウハウの20~30%くらいしか公開していないので、もっと深いノウハウもあります。

 

 ご活用いただいた際に、ひと言お知らせいただけると、今後の改善の励みになります。

 

 

 

 

なぜ全部出さないのか?

 

それは、まずはこの『現場の動き』を改善して疲弊しきった現場の時間と心に余裕を作ることが、全ての始まりだからです。

 

ここができていない状態で、経営の急所である

『在庫のムダ』

『作り過ぎのムダ』

などに手をつけるのは、副作用が強い劇薬になってしまいます。

 


   

品質不良と労災は「工程数×発生率」

 

製造業における労災発生数です。

 

食品製造業の発生数は製造業でぶっちぎりで最悪かつ増加傾向

死亡事故も令和4年、5年で最多となりました。 

 

(死傷災害発生率は全産業の中で陸上運送業に続いてワースト2位)

(2026年5月調査時点で)

 

新しい技術習得のイメージ画像

食品産業の安全な職場づくりハンドブック:農林水産省より

令和5年労働災害発生状況の分析等:厚生労働省より

品質不良と労災は「工程数×発生率」

 

労災の多さと品質不良、低生産性は「ムダな工程数」と「その工程の発生率」で食品産業の現状を説明できます。

 

 

●工程数が多い

●移動と大きな動作距離&重筋作業

●各作業工程の滞留の時間が長い

●ワークへの接触回数が多くなる

ほど、これらの発生数が増えてしまいます。

 

同じ製品でも工程数が多ければ多いほどコスト、場所、労働力が必要になり生産性が低下します。

 

工程数の増加が事故率や品質不良の増加につながるという視点は、2025年に発表された

 

「Using the Lean-Based Safety Leadership Framework to Improve Operational Efficiency and Reduce Occupational Risk: Evidence from a Case Study 」

SYSTEM SAFETY: HUMAN – TECHNICAL FACILITY – ENVIRONMENT, 7巻1号, pp.108–117)

 

 

でも示されています。

 

食品産業のとびぬけた労災発生数は「ムダ工程が多くカイゼンすれば生産性の向上が期待できる」とも言えます。

 

 

削減するべき工程とは

 

では、この考え方をみなさんの工場へ落とし込みます。

削減すべき作業・工程を紹介します。

 

 

●分業のための仮置き

●渡す。受け取る。それにかかわる運搬対応

●見えない需要に対応するためのクッション在庫(仕掛品)

●大量に一気に作り仮置きする

●高価・高性能装置の費用回収のための大量生産

  …などなど。

 

これらは付加価値を生まない(儲からない)付随作業です。

 

それに伴って発生する儲からない作業は

 

●仮置き

容器と洗浄、冷却、養生シート、保管場所(保冷庫)

保管場所の管理、棚卸…

 

●渡す。受け取る。

容器、場所など仮置きと同じ付随作業

10kg、20kg容器の台車⇋作業台、運搬作業

 

●クッション在庫

急な対応、属人化、機械の故障、保管場所、取り違え、

在庫管理、保冷費用、仮置きの容器&袋

 

●大量に作ると

機械が速くて作業者が分業せざるを得ず受け渡し作業が発生

大型機械による洗浄の複雑さ、属人化、異物混入

前後工程を同期させるための作り置き

 

●高価・高速機械

属人化、原価回収のため大量に作る、トラブルに対応できる人がいない。

大量に作りたくなり受け渡し、仮置き、クッション在庫が発生

 

 

↓付随作業に関する詳細はこちらをクリック↓

人時生産性向上に必要な3つの概念

 

 

付随作業に発生する品質不良

 

【受け渡しと仮置き】

容器の汚染、品温上昇、落下菌、取り違え、ひっくり返す

 

【クッション在庫】

菌の増加、取り違え(アレルギーで回収も…)、

デンプンの老化、油脂酸化、吸湿による品位の低下

先入先出管理、期限切れによる廃棄

 

【大ロット生産、高性能機械】

洗浄不足による菌、アレルギー汚染、機械の設定ミス

見込み外れによる欠品、廃棄

 

…などなど。品質不良あるあるになります。

 

 

付随作業に発生する労災

 

【受け渡しと仮置き】

仮置きのものをかわして運搬する必要が出てきます。

 

一気に台車や作業台に置こうとして

10kg以上の満杯の容器の上げ下ろしや低い姿勢の腰痛

 

一気に運ぼうとして台車に高く積み上げ

肩痛、コンテナ崩落事故

小さな段差、勾配で躓く

(水勾配、床の排水網にキャスターが引っかかる)

 

 

【クッション在庫】

仮置き場所に重量物を運搬する際の転倒事故

保管場所での衝突事故

 

低温保管庫の床は濡れたり、凍っているので転倒

 

 

【高速で大量に作る】

急いで作って機械に巻き込まれる。

単純作業の繰り返しで集中力切れの切創。

慌てて作って包丁で切る。走って転倒。

単純作業の繰り返しで首、肩を痛める。燃え尽き症候群

 

 

こちらも食品工場労災あるあるになっています。

 

 


デジタル化、自動化による落とし穴

 

行政や機械メーカー主導のDX化の多くは、この

「工程数」を無視したまま進められることがあります。

(近年はその反省から事前カイゼンが強調されるようになりました)

 

このような反省から全国の「よろず支援拠点」でも

労働集約型の業界(食品、サービス業など)対象の

「生産性向上窓口」が設置されました。

 

私の住む島根県でも担当は有名製造業のOBが多く、

個人事業、小規模事業のような労働集約型や

業界別の特殊事情にどこまで詳しいか疑問を持っています。

 

トヨタ生産方式や中小企業診断士、工業系のコンサルの

セミナーをセミナーを受講しますが抽象的な話がおおく

「食品の現場の方がどこまで落し込めるかなぁ」

…と感じてしまいます。

 

 

残念なDX図鑑

 

私が小規模&労働集約型における食品産業の現場で見てきた、

高価な装置・アプリを導入したのに???となっている実例を紹介します。

 

新しい技術習得のイメージ画像

 

 

 

工程を近づけ、同期させれば良いのに運搬ロボットを使う。

 

ムダな工程をただ速くしただけ

 

小ロット多品種生産ができてないのに受注予測ソフトを使う。

 

高速機械を入れたが装置が複雑で菌の汚染が発生。

 

時間当たりの製造可能量は増えたが結局人手は減らず属人化

 

のようなことが起きてしまいます。

 

 

トヨタ生産方式の大野耐一氏も

 

トヨタ生産方式で著名な大野耐一氏も

「カイゼンなき自動化は、ムダの自動化である」

これはトヨタ生産方式の専門家がジャストインタイムと

並んで大切にしている概念の一つです。

 

いわゆる「いわゆるニンベンの付いた自動化」(自働化)

につながる考え方です。

 

↓自働化に関する詳細はこちら↓

人時生産性向上に必要な3つの概念

 

 

実際に出会った残念なDX化、自動化

 

 

実際に私が見た実例です。

とある企業が補助金で高速の製麺機を導入しました。

 

「単位時間にたくさん作ったほうが生産性が高い」「高価な機械の償却をするために機械の能力いっぱいに作る」ことをしました。

 

速く作ると分業しなければ機械の製造速度に間に合わず、不要な受け渡しが発生しました。

 

ある工場では

仮置きせずにすぐ後工程の多工程持ちにしたら一人活人化できる。

 

とアドバイスしました。

担当者は「仕掛品管理のQRコードを読まないとエラーになってカイゼンできない」という回答が出てきました。

 

このような、DX、高性能機械が生産性を向上させるどころか、カイゼンを阻害する残念なことが発生してしまいます。

 


   

食品現場のムダ作業あるある

 

7つのムダはよく耳にしますが、自社の工程ではなかなかピンとこないかもしれません。

 

食品産業の現場で見られる「削減すると儲かる!」作業に落とし込みます。

 

①山積み作業&ダンゴ生産

②分業作業

③事前準備

 

設備生産中心、大量生産中心の現場ではOKでも、

小規模、労働集約型の現場においては生産性を落としてしまいます。

 

 

山積み作業&ダンゴ生産のムダ作業

 

●まとめて作ったほうが良い

●たくさんの人数をかけて分業で作業したほうが良い

と考えてしまう誤りです。

 

食品工場でよくみられるのはテーブルの上に肉や魚などの原料をドーンと置き、その周りを作業者が取り囲んで行う作業です。

 

この時に行うのはテーブルの上に大量におきたいため、カゴや原料を10㎏以上(場合によっては20㎏!)入れテーブルの上に山積みします。

 

作業後も次の工程のグループへの受け渡しのために高重量をカゴに入れ運搬&卓上にひっくり返します。

 

台車から高重量のものを持ち上げる作業で腰痛やひっくり返す事故が発生しがちです。

 

このような作業をしている場合は山積み作業者に前後工程を取り込むことで重筋作業になりがちな受け渡し作業がなくなります。

 

 

 ↓山積み作業。この男性は動いていますが、付加価値を生んでいません。

分業作業を一人完結(セル生産)に

 

これもたくさん人数をかけて、まとめて作ったほうが良い

と考えてしまう間違いです。

 

一つの工程をまとめて、大きな人数で作る・・・

見かけ上はものが速くできるように見えます。

 

しかし作業者人数×作業時間で見ますと少ない人数になるほど人時生産性が向上します。

 

理由は1個、1個の製品や原料を「渡す&受け取る」の作業を大量に生んでしまいます。

 

カイゼン方法は一人で完結できないか考えてみます。

 

 

 

また

高性能&高速処理の装置で高速に大量に作ると後工程の作業者が処理しきれないため強制的な分業が発生してしまいます。

 

その結果、付加価値を生まない受け渡し作業が発生してしまいます。

 

これが「高価な機械を導入したのに現場の負担が減った気がしない」…と感じる原因の一つです。 

 

 

↓機械を導入したが「人が機械に使われてしまっている」事例

新しい技術習得のイメージ画像

 

 

このような場合は稼働率→ベキドウ率への観点にかえ、安価なセンサー、からくりを付与し「ニンベンのついた自動化」(自働化)を導入します。

 

作業者のタイミングに合わせて機械を停止させ、小さなボトルネックを作り受け渡しをなくします。

 

 

↓ベキドウ率目線でニンベンの付いた自動化の事例です。 

新しい技術習得のイメージ画像

 

↓小さなボトルネックを作ることで、生産性を向上させた事例です。

新しい技術習得のイメージ画像

↓ベキドウ率(可動)に関する詳細はこちら ↓

人時生産性向上に必要な3つの概念

 

 

ただし、食品関連業ではアレルギーや衛生度により、必ず分業しなければならない場面もあります。

 

この点は食品に詳しくない工業系の専門家の介入で大きな食品事故が起る原因となります。

 

現場を知らないコンサルタントの言いなりになってはいけないところです。

(やまもとフードテックなら食品も詳しいから安心ですね)

 

 

 

事前準備を止め、その場加工にする

 

 

食品工場の包装工程で、大量に山積みされたダンボールがみられます。これも前に出てきた山積み作業と同じです。

 

製品や資材、原料が山積みになった事前準備を探してください。

 

これも「1工程を一気作りしたほうが効率的」の錯覚によるものです。

 

事前に準備していると物が速く動くので「生産性が高い」と錯覚してしまいます。

 

ダンボールの例ですと

「取り出す→組立→台車に積む→保管庫へ運搬→保管管理→取り出し→使用」

と黄色い字は付加価値を生まない作業になります。

 

「必要な時に、必要なモノを、必要な分だけ」作り、さらに食品には衛生、温度管理の観点から「必要な場所に」も加わります。

 

この時のカイゼンの切り口は、小さなボトルネックを作り、人の作業に合わせて機械スピードをコントロールします。

その準備のあと「その場加工」を行います。

 

 ↓事前準備のムダと、事前準備がムダとならない事例です


   

安易なDX、機械化は現場を殺す。今、必要なのは「ヒト」への投資

 

「DXを導入すれば、すべてが解決する」

そんな甘い言葉が業界を席巻しています。

 

しかし、現場の泥臭い工程改善を疎かにしたまま、

数万円/月のサブスクや

数百万円の投資をデジタルに投じる

のは、穴の開いたバケツに必死に水を注ぐようなものです。

 

私が見てきたのは、

アナログ→デジタル→アナログの情報変換に振り回され

デジタルのルールのためにカイゼンができない理由となり

 

最新鋭のロボットが動く傍らで、機械の稼働率を上げるために

人間が長い時間、以前より不自然な動きを強いられて疲弊し、

ついには品質事故や労災を招くという本末転倒な光景でした。

 

食品製造業のとびぬけた労災発生数と低生産性は、

●付加価値の低いムダな作業

●いつ使うか判らない山積み品

●長時間の固定化された分業

●重筋作業と不要な運搬

●水や油で汚れた床で走り回らなければならない

…という現場があるからです。

 

デジタルは魔法ではありません。

「ムダ工程 × 事故発生率」という物理的な現実に目を向けず、

ただ「速いムダ」を追求し続ける今の風潮に、私は強い危機感を抱いています。

 

今、食品産業に必要なのは、最新のシステムでは決してないです。

現場の「一歩」を減らし、「一動作」を削ぎ落とす、

泥臭くも確実な「引き算の知恵」です。

 

機械に支配される現場ではなく、

人間が主役となり、知恵によって安全と利益を生み出す現場。

その土台があって初めて、デジタルは真の価値を発揮します。

 

やまもとフードテックは、その「土台」を作るために活動を続けています。

 

 

 


   

山本宗幸(食品技術・生産性向上 伴走アドバイザー)

 

食品製造業を中心とした生産性向上の専門家として全国で活躍。食品技術に精通しているからこそ可能な食品に特化したトヨタ生産方式と「低コスト・即実行型」の手法により、ムリ・ムダ・ムラの排除と従業員の待遇向上に尽力している。技術・衛生管理・人材育成を一体化したアプローチと「現場目線で、ムリからカイゼンする」スタンスは、数名の個人事業から700人の中堅企業まで、多くの中小企業から厚い信頼を得ている

  

公益財団法人 しまね産業振興財団・ものづくりアドバイザー派遣事業 専門家登録

1級惣菜管理士、食品表示検定(中級)

2023年より「やまもとフードテック」で活動中

 

 

 

 


    

会社概要

会社名 やまもとフードテック
代表者名 山本 宗幸(やまもと むねゆき)
肩書き 食品技術・生産性向上 伴走アドバイザー
事業内容

・生産性向上のアドバイス

・食品の商品開発

所在地 島根県松江市奥谷町105-11
TEL 090-6848-2586
Email [email protected]
 ホームページURL https://www.yamamoto-food-tech.com/ 

   

  


   

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